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ファッション

プラダ やプーマが再びスニーカーを? ファッションウィークが示した「ブーム終焉説」の誤解

編集部
08/10/2025 01:00:00
記事のポイント

  • 「スニーカーブーム終焉」と言われるなかでも、主要ブランドが再びスニーカーを重視している。
  • プラダやプーマなどがランウェイやコラボで新モデルを発表し、文化的、経済的価値を再定義している。
  • 価格戦略やコラボ拡大により、スニーカーがハイブランドの新たな顧客接点として機能している。

2010年代後半から2020年代初頭にかけてのスニーカーブームのあと、ファッション業界はレザーのオックスフォードやローファー、あるいはスノアファーやバレエスニーカーのようなハイブリッドなど、よりドレッシーな靴へと回帰しているかのようにみえた。

米コンプレックス(Complex)誌でさえ、2024年を「スニーカー・ブームが死んだ年」と断言していたほどである。

ランウェイが示した「スニーカー復活」の兆し

しかし、このファッションウィークのランウェイや店頭で、ファッションブランドはスニーカーへの愛が健在であることを示した。

4大ファッションウィークすべてにおいて、タナー・フレッチャー(Tanner Fletcher)、ドファネット(Dauphinette)、ボス(Boss)、プラダ(Prada)、テオフィリオ(Theophilio)、ディースクエアード(Dsquared2)といった多様なブランドが自社製のスニーカーをランウェイに登場させたり、既存ブランドのスニーカーを組み合わせたり、スニーカーブランドとのコラボレーションを発表したりした。

シルエットは変化しているかもしれない(過去数年のチャンキースニーカーよりもスリムなスニーカーのほうが一般的で人気が高い)が、スニーカーはランウェイで依然としてよく見かけるアイテムである。

これは、前シーズン、ハイスノバイエティ(Highsnobiety)のような評論家が、プラダなどの大手ブランドのスニーカーがランウェイで著しく少なかったと指摘した昨シーズンからの転機である。

ブランドがスニーカーを投入する理由と狙い

スニーカーがハイファッションに登場し続けていることは、その息の長さを証明しており、スニーカーで実験を試みたいブランドにとって、まだ間に合うという兆候である。

一部の専門家によれば、クロスオーバースニーカーは、通常よりハイエンドな消費者を対象とするブランドが、ブランドの価値を薄めることなく、より低価格なアイテムを提供できるため、依然として魅力があるという。

消費者の財布がインフレや関税によって圧迫されている今、それは価値のあることかもしれない。

ファッションウィークでの注目スニーカー事例

たとえば、ニューヨーク・ファッション・ウィークでは、タナー・フレッチャーがホカ(Hoka)のボンダイ・メリージェーン(Bondi Mary Jane)をいくつかのランウェイ・ルックに取り入れた。

このスニーカーは当時未発売であったが、ランウェイはその10月1日の発売に先駆けてプレビューを提供した。

「ホカは常に限界を押し広げ、高い機能性とファッションを融合させる独自の方法を見つけ出すことをめざしており、これは、ライフスタイル製品やファッションを第一に考えるブランドとのパートナーシップを通して見て取れる」と、ホカのデザイン・ライフスタイル担当ディレクターであるクリス・フイ氏はGlossyに語った。

「タナー・フレッチャーとの協業でボンダイ・メリージェーンを発表したことで、我々はこの多面的な、そしてこのシルエットに関しては型破りなアプローチを紹介することができた」。

一部のブランドは自社のスニーカーをリリースした。ミラノ・ファッション・ウィークでは、ディースクエアードがヴィンテージ風のDC642を発表し、サントーニ(Santoni)はヨーカ―(Yorker)やモンテカルロ(Monte Carlo)など複数の新しいスニーカースタイルを披露した。

ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries van Noten)では、2024年にデザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン氏が退任する直前に、自身の名を冠したデザイナーがスニーカーをブランドのラインナップに加えたが、これはすぐに「サンバ以降最高のスニーカー」として話題を呼んだ。

今回のパリ・ファッション・ウィークでは、新しいクリエイティブディレクターのジュリアン・クラウスナー氏が、9月29日のショーで複数の新しいバージョン、カラー、シルエットを発表し、フラットスニーカーを引き続きブランドのルックの重要な要素としている。

プーマやニューバランスなど、ブランド横断のコラボが加速

そのほかのブランドは、既存のスニーカーブランドと直接連携した。プーマ(Puma)は複数のランウェイに登場し、テオフィリオ、ドファネット、アフルワリア(Ahluwalia)といったブランドと提携して、ランウェイ・ルック用のスニーカーを提供した。

前シーズンのパリ・ファッション・ウィークでは、プーマはフットウェアデザイナーのサレヘ・ベンバリー氏と提携し、ヴェラム1(Velum 1)を発表。これはサレヘ・ベンバリー氏の6月のショーに登場した。

しかし、両ブランドはこのスニーカーの幅広いリリースを今シーズンのパリ・ファッション・ウィークに合わせており、9月30日にサレヘ・ベンバリー氏のWebサイトで、10月7日にキス(Kith)の店頭で販売を開始した。

これらのスニーカーコラボレーションと、ブランドの通常製品とのあいだには、著しい価格差が見られることが多い。

フランスのファッションブランド、セザンヌ(Sezane)は、しばしば衣料品を300ドル(約4万4400円)以上で販売している。しかし、パリ・ファッション・ウィーク中、セザンヌはニューバランス(New Balance)との新しいコラボレーションを発表した。

これはニューバランスのスニーカー、471に対するセザンヌによるデザインである。このスニーカーは、より低価格な150ドル(約2万2200円)で販売され、10月3日に米国限定で、10月5日にグローバルで、そして10月15日にニューバランスのオフラインおよびオンライン・ストアで発売される。

スニーカーブランドとの協業がもたらすブランド価値の拡張

「ハイファッションとスニーカーのコラボレーションが急増している背景には、いくつかの強力な要因があります」と、スタイリストのエレナ・ソロモン氏は述べた。

「第一に、その手軽さ。こうしたコラボレーションは、憧れの顧客に、高級品の価格に縛られることなく、『ラグジュアリーなアイデンティティ』の一部を手に入れる機会を与えてくれる。第二に、文化的な関連性。スニーカーは今や、ストリートウェア、アート、パフォーマンス、そしてファッションの交差点に位置しており、ブランドが時代の変化に対応するための自然な手段となっている」。

現在パリでショーに参加している別のスタイリスト、タニア・ドゥドゥ氏は、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)、プラダ、ドリス・ヴァン・ノッテン、ジャックムス(Jacquemus)のランウェイでスニーカー・スタイルの波を見たとGlossyに語った。

「今、スニーカー・コラボはいたる所で見られる。そして正直に言って、私にとってはあらゆる面で完全に理にかなっている」と彼女は言い、ミラノ・ファッション・ウィークでのプラダのサテン・スニーカーを特にお気に入りとして挙げた。

「ラグジュアリーブランドとスポーツウェアブランドがタッグを組むのは、本当にエキサイティング。2つの美学がぶつかり合い、新しいオーディエンスが興味を持つことができる」。

データが示すスニーカー市場の持続的成長

2025年上半期における米国のフットウェア全体のドル売上が1%減少したにもかかわらず、「スニーカートレンドは終焉を迎えている」という言説とは裏腹に、サーカナ(Circana)のデータは、スニーカーが依然としてフットウェア部門の成長の大半を牽引していることを示している。

アスレジャースニーカー、ランニングスニーカー、クロストレーニングシューズの売上も、2025年それぞれ3%、7%、9%増加している。

スニーカーの成長は部門全体に広く分布している。アディダス(Adidas)は2025年初めに営業利益が82%増加し、ゴールデン・グース(Golden Goose)は2桁の売上成長を記録した。

「これは賢明な動きだ」と、エラナ氏の妹であるスタイリストのディナ・ソロモン氏は述べた。

「スニーカーはアクセスを広げ、ブランドを文化的に関連性のあるものにし続け、スタイリストにプロポーションと快適さを扱う新しい方法を与える。リスクはバランスに関するものだ。ドロップ(新製品の発売)が多すぎるとプレステージが希薄化する可能性があり、ずさんな実行はクラフツマンシップを安っぽくし、偽りのコラボレーションは金儲けのように感じられる可能性がある。ブランドがブランドのDNAを忠実に守りつつ、真に新鮮なものを提供できれば、大きなメリットが期待できる。

[原文:Fashion Briefing: Fashion Month proves fashion’s love affair with sneakers is far from over

Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)

提供元 Digiday