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ビジネス

ドットダッシュ・メレディス 、社名変更で方向転換 成長見込める19媒体に集中

編集部
05/08/2025 07:00:00
記事のポイント

  • ドットダッシュ・メレディスはピープル・インクへの社名変更によってピープル(人々)を中核に据えた戦略を進めている。
  • 全40ブランドのうち19に成長資源を集中させることで、選択と集中の体制を明確にしている。
  • AIの台頭や検索依存の変化を見据え、ブランドの価値と生活者との接点を再定義している。

ドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)は、「ピープル・インク(People Inc.)」への社名変更により、同社の中核であるフラッグシップ媒体を軸に据え直し、コアブランドの本格的な成長に向けた取り組みを開始した。

「ピープル・インク」をはじめ、「オールレシピス(Allrecipes)」「ヘルス(Health)」「インスタイル(InStyle)」「マーサ・スチュワート(Martha Stewart)」「ベリーウェル・マインド(Verywell Mind)」など、全40媒体のうち19媒体が重点的に扱われる。

これらのブランドこそが、投資対象となり、保護され、長期的な成長を見込まれている。一方、残る21ブランドは運営は継続されるものの、成長戦略の範囲外となる。

CEOのニール・ヴォーゲル氏の言葉を借りれば、戦略の要は「フォーカス(集中)」である。AIの台頭や終わりの見えない不確実性によりメディア業界が再編されるなか、「すべてがスケールできる」という幻想は終焉を迎えた。今回のリブランディングは単なる社名変更ではなく、「何を守らないかを知ること」が生き残りの鍵であるという認識を示すものだ。

Digidayはヴォーゲル氏に話を聞き、ピープル・インクをポスト検索時代にどう位置づけているのかを掘り下げた。

なお、このインタビューは要約・編集されている。

◆ ◆ ◆

ドットダッシュ・メレディスはなぜピープル・インクへと社名変更するのか?

我々が事業統合を進めた際、ドットダッシュ・メレディスという名前が永続的なものではないことはわかっていた。ただ、買収を完了しなければならず、膨大な作業もあったため、時間に余裕がなかった。結果的に、実質的には名前を「くっつけただけ」になってしまった。

正直、不格好で、よい名前でも意味のある名前でもなかった。「ドットダッシュ・メレディス」なんて、法律事務所か石油会社のような名前だ。

新しいブランド名を求めて検討を重ねたが、最終的には、すでに最適な名前が存在することに気づいた。それが、我々の最大の資産である「ピープル(人々)」だ。

もうひとつの理由。そしてより重要かもしれない理由は、「ピープル」という言葉が、合成され偽りで人工的なものがあふれるこの時代において、我々の物語や価値観を端的に表しているという点だ。

我々は、本物の人間が、本物のブランドを通じて、本物のコンテンツや体験を生み出している。未来を明るいものにできるとすれば、それはこれらのブランドにかかっている。

多くのサイトがトラフィックを維持するのに苦労しているなか、なぜピープル・インクは成長しているのか?

このブランドを運営するチームが、非常に優秀で先見性に富んでいるからだ。我々は、徹底して「非ノスタルジック(過去にとらわれない)」である。つまり、「かつてうまくいったから」や「気に入っているから」といった理由で、過去と同じことを繰り返すことはしない。

大きく変えたのは、コンテンツ制作のプロセス、つまり編集部の運営そのもののような仕組みを採用したことだ。たとえば、紙の雑誌ではジョージ・クルーニーを扱えば確実に反応がある。しかしWebではカーダシアン、インスタグラムではアリックス・アールがその媒体におけるセレブリティとなる。

それぞれの分野でもっとも優れた人材に自由にやってもらい、生活者が求める場所でコンテンツと出会えるようにする。ブランドへの愛情は大切だが、神聖視してはならない。このプロセスを、我々はすべての媒体で実践してきた。

その戦略がピープル・インクでうまくいっているなら、検索トラフィックが減っているほかのサイトにも適用できるのでは?

我々には40のブランドがあり、そのうち19を「コアブランド」と位置づけている。最近の四半期では収益が増加しているが、これは「すべてのブランドが成長している」という意味ではない。むしろ、「成長しているブランドの数が、そうでないブランドを上回っている」ということだ。

すべてのブランドが、現在の環境下で生き残るための条件を備えているわけではない。だからこそ、成長しているブランドにリソースを集中させている。もちろん、すべてのブランドを大切に思ってはいるが、状況が厳しいものもある。そうしたなかで非常につらい決断を下さなければならない。

我々の40のブランドのうち、もっとも大きな19ブランドにすべてのリソースを注ぐ。これが鍵である。

では、そのほかの媒体の将来はどうなる? 放置して枯らすということか?

「コアブランド」ではない媒体についても、それぞれがこの世界に存在するだけの価値を持っている。そうでなければ、すでに手放しているはずだ。ただし、それらが今後の経済成長を牽引するエンジンになることはない。

検索に依存しすぎており、ほかの手法でオーディエンスを獲得できていないブランドには、大規模な投資は行わない。現在は順調に見えていても、将来的には通用しなくなる可能性があるからだ。

ピープルブランドへの投資がさらに増えるということか?

ピープル・インクはすでに我々の最大のブランドであり、もっとも多くの投資を受けている。したがって、今以上の追加投資はないと考えている。それよりも、「ピープル」という名前の認知度や持つ意味を、より一層活用していくという方針だ。特別扱いするというわけではない。

変な名前にしなかったのはよかった。「トロン(Tronc)」を覚えているか?

メディア業界では、どんなことをしても揶揄されるものだ。

[原文:Dotdash Meredith’s rebrand to People Inc. formalizes a post-search media strategy

Sara Guaglione(翻訳、編集:藏西隆介)

提供元 Digiday