
2025年6月25日、パナソニックの家電事業などを担うパナソニック くらしアプライアンス社で、男女共同参画週間(毎年6月23日〜29日)に合わせた社内イベントが開催された。
本イベントには、女性の社会課題についてオープンにディスカッションするポッドキャスト番組「ハダカベヤ」を配信するタレントのIMALU氏、起業家・ プロデューサー のメグ氏、マーケティングプロデューサーのなつこ氏、そして女性健康科学者の本田由佳氏が登壇。女性ならではの健康課題や、理想的な職場環境についてのトークが繰り広げられた。
生理や更年期の症状が辛くても“我慢”して出社

トークセッションでは、パナソニック社員に聞いた「職場の“あるある”体験」アンケートの結果を共有。特に登壇者の共感を呼んだのは、「生理や更年期の症状が出ていても我慢して出社した」という声や「会議が長すぎてナプキンを変えたくてもタイミングがなくて困った」という具体的なエピソードだった。

直近まで国内大手の総合広告代理店に勤務していたなつこ氏は、自身の経験として生理期間に会議が1時間半以上に及ん際、(ナプキンを変えるために)トイレに立つことを言い出せなかったエピソードを紹介した。
「長時間の会議のときは、椅子が汚れていないか心配で会議に集中できないときもありました。やっと会議が終わったと思ってもみんなが出ていくまで待って、(ナプキンから経血が漏れていないかを)確認してから席を立ったことも……。会議中でもトイレに立ちたいことを言えばいいんですが、なかなか言い出せないんですよね」(なつこ氏)

パナソニック くらしアプライアンス社 DEI・組織開発室室長の小泉氏によると、パナソニックでも生理休暇は制度としてあるが、取得率は高くないという。
「前職で生理休暇を使ったことがあって、もちろん男性上司や周囲からは何も言われませんでした。ただ、その翌月も生理で体調がすぐれなかった際、連続で生理休暇を使うのはどうかと思い、我慢して休まずに出社しました」(なつこ氏)
女性健康科学者である本田氏は、長時間の会議における休憩の重要性に言及。
「2時間の会議であれば、1時間に1回、5分程度の休憩をとることを会社のルールとして組み込むことで、水分補給やトイレ、糖質補給が可能になり、集中力やパフォーマンス自体も向上する可能性があります。
生理中の女性だけでなく、肩こりや頭痛などの悩みを抱えている人もいることを踏まえて、リフレッシュの時間を設けることは必要だと思います」(本田氏)
婦人科に行った方がいいことは分かる。でも時間が……

本田氏は、生理痛や更年期症状が女性ホルモンの影響で起こることに触れ、専門的な見地から対処法を提案した。
「痛みをゼロにすることは難しいかもしれませんが、体の状態を仕事の状況などに合わせてコントロールする方法はあります。かかりつけ医を持ち、低用量ピルなどを利用して生理をずらすなど、うまく付き合っていけるといいのかなと思います」(本田氏)

それに対し、IMALU氏からは「病院に行く時間がとれない」という現実的な悩みも。
「婦人科はとても混んでいて、半日程度かかることも珍しくありません。仕事が終わってしまう、休みがつぶれてしまうという声もあって、そういった状況を解消する必要もありそうですよね」(IMALU氏)
部下や同僚の「本音」が分からない

部下や同僚とのコミュニケーションでは、「『無理しないで』と声をかけても『大丈夫です』と返され、本音が分からない」という声が多かった。
ランジェリーブランドを扱う会社を経営するメグ氏は、店舗運営スタッフを抱えていた経験から、「抽象的な声かけは、声かけをもらったという事実にはなるが、具体的な解決にはつながらない」と指摘。自身が意識したのは「抽象的ではなく、具体的な声かけ」だと語った。
「『私にはこんなふうに見えているんだけど、この認識であってる?』など、相手が何に困っているかを特定するスタンスで話しかけることで、具体的な返答がくるようになりました。さらに自分の意見を押し付けず、スタッフが自ら話しやすい環境づくりにつなげられたと思います」(メグ氏)
IMALU氏は「全てがパワハラやセクハラになってしまうのではないかと、声をかけられない・聞けない男性上司もいると思う。それが曖昧なコミュニケーションにつながるのでは」と分析。
これに対してメグ氏は、「曖昧にするともっと大変なことが起きる。むしろ、こういう話は曖昧にしてはいけない」と強調した。
「言葉だけ聞くとハラスメントと思われるようなことでも、人によってはフランクに聞こえる場合や、特定の人から言われると気にならないが、別の人から言われると嫌に感じる場合もある……信頼関係や、どこまで安心して話せる仲なのかが非常に重要だと思います」(IMALU氏)
「ハダカベヤ」が目指すもの──親しき仲でも対話を

今回イベントに登壇した、同世代の3名からなるポッドキャスト配信ユニット「ハダカベヤ」は、もともとIMALU氏とメグ氏の友人関係から生まれた。
たわいもない会話の中で、「性、恋愛、結婚、セックス、ウェルビーイング、人種、女性活躍など、話しづらい話題を発信していくのも大事なのでは」という話になり、当時会社員だったなつこ氏も加わり、3人の異なる背景を持つメンバーが集合して「ハダカベヤ」が誕生したという。
ジェンダーや性などデリケートなテーマも扱う「ハダカベヤ」では、「言葉の選び方」や「伝え方」が常に課題となっていると、3人は話す。
「私はセックスのことはセックス、生理のことは生理とストレートに言いたい。わざわざ隠語化する必要はないと考えています。ただ、コンテンツ化するということは、プラットフォームに乗るということ。ちゃんと意義あるディスカッションをしたいのに、エロトーク風に見せた方が再生数が回ることも……。そこに社会の歪みを感じています」(メグ氏)
「誰も傷つけたくないし、かといって傷つかないようにふわっとした言葉でもダメ。そのバランスが難しいですね。ストレートに言わないことで逆に人を傷つけることもあるので、なるべくはっきりは言うようにしていますが、言葉の選び方には気を付けています」(IMALU氏)
そこで「ハダカベヤ」では、特にセンシティブなテーマを扱う際は、例え仲が良い・互いを知っている3人でも、必ず事前に対話しすり合わせる時間を設けているそう。「私はこう思っている」「ここまでは話したくない」など個々の意向を事前に確認し、メンバー間の心理的安全性を確保するようにしているという。
「まずは私たち自身の心理的安全性を担保する。そのうえでリスナーさんと私たちの間にある心理的安全性を担保するみたいな、二重の心理的安全性を構築できるようにしています」(メグ氏)
大事なのは「遠慮」ではなく「配慮」

今回のイベントでは、自分と相手の状態を知った上で、周囲に「遠慮」ではなく「配慮」を行う重要性が語られていたことも印象的だった。
「人とのコミュニケーションでは、遠慮と配慮の違いを把握して、会話する。『遠慮して言わなかった』ことが、相手から全然違うように捉えられるのはよくあること。
自分の言動が相手にどう伝わっているかを気にしながら日々過ごすことが大事だと思います」(なつこ氏)
役職や性別に関わらず、対話を通して自分と相手を知ることが、誰もが健康に輝ける職場環境、さらには誰もが過ごしやすい社会の実現への一歩なのかもしれない。
(執筆:伊與田彩夏、編集:中島日和[Mashing Up]))