ソニーグループ(以下ソニーG)は5月8日、経営方針および業績に関する説明会を開催した。
同日開示された2025年度の連結業績は好調だった。売上高は12兆4796億円(前年比4447億円増)、営業利益は1兆4475億円(前年比1709億円増)で過去最高を更新している。
業績には、ホンダとのEV合弁事業である「ソニー・ホンダモビリティ」の事業を停止するための費用を中心に、総額563億円もの損失も追加計上されている。
だが、それでも過去最高益を叩き出し、次に向けた大きな一手も発表した。
それが、台湾半導体製造大手であるTSMCと、次世代イメージセンサーの開発に関する合弁事業を行うという発表だ。ソニーGは、技術的基盤を支えるイメージセンサーについて、製造戦略を大きく変えていく。
ゲームと音楽、映画で安定的な収益を確保しつつ、次の戦略をどう見るのか。説明会では、ソニーグループの取締役代表執行役社長CEOの十時裕樹氏が経営方針について、改めて解説した。
好調ソニーG、67%の売上はエンタメ領域から
まず業績を確認しておこう。
冒頭で解説したように、過去最高の売上高・利益を達成している。セグメント別の業績を見ても、主要5事業の中で利益が出ていない領域はない。特に前年と比較して大きく伸びているのは、明確に「ゲーム(G&NS)」と「音楽」分野だ。
ソニーGの収益は、過去と異なり、大半がエンターテインメント領域から生まれている。エンタメ領域は、2012年度には連結売上高の約30%だったが、2025年度には約67%にまで拡大している。「ゲーム」「音楽」「映画」という3領域は、ソニーGの中核要素と言える。
音楽領域には、アニメや日本国内向けの映画も含まれる。世界的な大ヒットを記録した『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』、国内で記録的なヒットとなった『国宝』の利益貢献が大きい。
海外で展開しているアニメ専門配信プラットフォームであるクランチロール(Crunchyroll)は、2026年3月末時点で全世界2100万の有料会員を獲得し、こちらも成長を牽引している。
好調なゲーム事業が直面する「メモリー価格高騰」
ゲームについても、過去最高益を更新している。ただし、ゲームについてはいくつか補足が必要だ。
利益の中でも大きな影響があったのが「為替」だ。売上自体は2024年度から横ばいなのだが、為替影響で873億円のプラスが出ている。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)傘下で、ネットワークゲームを手がけるバンジー(Bungie)に関しては、1201億円もの減損を出している。
だが、ネットワークサービス自体の増収やいわゆるサードパーティー製ゲームの売上拡大、そして為替の影響により、減損を加味した上で、利益を前年度比で12%増やしている。非常に底堅く収益貢献が続く。
だが、単純に喜ぶことはできない部分もある。ハードウェアの価格上昇に伴う販売数量減少があるからだ。
PlayStation 5(PS5)は累計出荷台数が9300万台を超え(2026年3月末時点)、十分に普及したゲーム機ではある。月間のアクティブユーザー数も1億2500万アカウント(2026年3月時点)と過去最高を記録しており、それが安定的な収益源ともなっている。
だが、年間の販売数量については「合理的な価格で調達できるメモリーの数量に基づいて販売台数を計画」(ソニーG・執行役CFOの陶琳氏)とし、数量を追わない戦略としている。
現在はAI投資の煽りを受ける形で、コンシューマ向け機器に使うためのメモリーやSSDの調達が難しくなっている。メモリー高騰などの影響を受け、PS5も2026年4月より、本体価格を1万円から2万円値上げしている。
日本専用の「デジタル・エディション 日本語専用モデル」は価格を5万5000円に据え置いているものの、光学ディスクドライブ搭載モデルは9万7980円になっている。
メモリーなどの調達価格高騰は、ソニーGだけでなく、どのメーカーも等しく影響を受けている。任天堂も5月8日、「Nintendo Switch 2」をはじめとした同社製品の値上げに踏み切った。ソニーG・十時CEOは「値上げしたばかりなので、PS5のさらなる値上げの予定はない」と話す。
これ以上の価格高騰がビジネス自体に影響を与えるという懸念は認めており、「今後は本体価格をいじるのではなく、プロモーションにかけるコストなどでバランスを取り、収益性をマネージしていく」(十時CEO)とする。
PS5は発売開始から6年が経過しており、次の世代の投入も近い。2026年度には次世代プラットフォームに向けた投資の増加を見込んでいる。
メモリーの調達価格高騰がいつまで続くかは諸説あるが、十時CEOは「2027年も続く」と見通しを語る。このことは、次世代機の価格戦略と立ち上げには非常に不利な状況でもある。
十時CEOは「発売時期や価格は未定」としつつも、「ハードウェア全体でのコスト削減や販売方法の工夫、ビジネスモデルを含めたシミュレーションを進めている」と説明する。
ハードウェアだけでなくプラットフォームの魅力を高めることがより重要になるが、同時に、「高くては買えない」という部分とのバランスをどう確保していくかが、ここから数年のゲーム事業では重要な領域になりそうだ。
TSMCと合弁へ。フィジカルAIのニーズ爆発に備える
エンタメ領域が強いソニーGだが、それを技術的に支えるのは「イメージセンサー技術」だ。業務用カメラからスマートフォンまで、世界トップシェアのイメージセンサー事業を持つことが、戦略上重要な要素となっている。
イメージセンサー事業は、主軸であるスマホ向けが好調で、センサーの大判化に伴う単価アップも効いている。為替ではマイナス影響が大きいものの、売上高・営業利益ともに前年比で大幅な進捗があった。
その上で、今後に向けた施策として発表されたのが、TSMCとの提携だ。