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旅行

高い塔は富の象徴だった…14世紀にイタリアの豪族が建てた塔は高さ45メートル

Lydia Warren
02/08/2025 06:00:00
Torre Guinigi
イタリアのルッカに立つトッレ・グイニージには、ユニークな屋上庭園がある。
Maremagnum/Getty Images

2025年の今、富をもつ人が自宅で誇示するものといえば、邸宅内のシアタールーム、ヘリポート、地下に広がる大きなガレージ、あるいは特注のアート作品かもしれない。

しかし中世イタリアでは、もっとわかりやすかった。背の高い建物を所有する者ほど、富と影響力が大きいと考えられていたのだ。

富をもつ者たちは、できるかぎり高い塔を建て、競争相手よりも優位に立とうとした。なかには、トスカーナ州ルッカのように、その競争から、中世の摩天楼ともいえるスカイラインが生まれた都市もある。

しかし、ルッカの観光局によれば、現代のルッカには、当時から残る塔は2つしかないという。そのうちの1つが、14世紀に建てられたトッレ・グイニージ(Torre Guinigi、グイニージの塔)だ。

興味深い歴史に加えて、この塔の注目すべき点は、トキワガシの木々が生えるユニークな屋上庭園だ。この庭園は、街路からでも見える。

グイニージの塔を探索し、その歴史と屋上庭園からの見事な眺めを見ていこう。


トスカーナ地方の町、ルッカのスカイラインを支配する高さ45mの「トッレ・グイニージ」

The Torre Guinigi is significantly taller than the buildings around it in Lucca, Italy.
グイニージの塔はトスカーナ州ルッカに建ち、ほかの建物群を見下ろしている。
Marian Bulacu/Shutterstock

ロマネスク・ゴシック様式の典型であるこの中世の塔は、14世紀後半、裕福な商人で銀行家の一族だったグイニージ家のために建てられた。グイニージの塔の観光客向けウェブサイトによれば、この塔は、グイニージ一族が住んでいた建物群の一つだという。

ルッカには一時期、130を超える塔が立っていた。ルッカ観光局によれば、現在でも残る中世の塔は2つだけで、そのうちの1つがグイニージの塔だという。


建造当時、この地域に住む人々は、誰が最も高い建造物をつくれるかを競いあっていた

Visitors among the trees on the top of Torre Guinigi in Lucca, Italy.
観光客は、グイニージの塔の屋上にある庭園を探索できる。
Animaflora PicsStock/Shutterstock

イタリアでは、誰が最も高い塔を建てられるかを示すために、富を握る一族が塔の建造を競いあうことがよくあった。

ルッカを訪れた、MPツアーズ創業者のパウラ・スタンゲッタ(Paula Stanghetta)はBusiness Insiderに「塔は、権力や重要さ、名声、富の象徴でした」と話した。

「最も高く、最もユニークな塔を建てようと、富裕層の一族たちが競いあっていました。そうした塔は、攻撃されたときの戦略上の利点にもなりました」

だが16世紀までに、塔の大部分は破壊されるか、サイズを縮小された。単純に、高さに耐え切れずに崩れたものもある。

ルッカ観光局はこう書いている。

「ある一定の高さを超えると塔はしばしば崩壊し、所有者は嘲笑の的になり、敵の一族にとっては大きな満足になった」


グイニージの塔は現在、一般に公開されている

Torre Guinigi in Lucca, Italy, is open to the public.
グイニージの塔は、サンタンドレア通り(Via Sant'Andrea)とデッレ・キアーヴィドーロ通り(Via delle Chiavi d'Oro)が交差する角にある。
Adwo/Shutterstock

塔の観光客向けサイトによれば、この塔はグイニージ家が1968年まで所有し、この年に子孫が市に遺贈したという。

石と煉瓦でできた塔は修復され、1980年代に一般公開された。


屋上にたどりつくには、230段の階段を上らなければならない

An aerial view shows people climbing a staircase inside the Torre Guinigi in Lucca, Italy.
トッレ・グイニージの内部の階段を上る人々。
PHAS/Universal Images Group via Getty Images

現在、観光客は28の区間からなる230段の階段を上って屋上まで行ける。建造当時、階段は塔の外側にあったそうだ。

入場料は8ユーロ(約1370円)で、訪れる時間帯を事前に予約できる。

屋上につくと、360度の風景と、世界屈指のユニークな庭園が現れる

Visitors at the top of the Guinigi Tower in Lucca, Italy, look out on the houses below.
グイニージの塔の屋上にいる観光客。
Lenush/Shutterstock

トスカーナ州観光局によれば、この塔を建てたとき、グイニージ家は「復活と再生を表す象徴として」屋上庭園をつくったという。

現在では、地中海地域原産でイタリアでよく見られるトキワガシが、イタリアの太陽を遮る木陰を観光客に提供している。

スタンゲッタはトッレ・グイニージについて、「庭園と高さが、この塔のユニークなところです」と話した。

「そしてもちろん、この庭園にまつわる伝説と悲劇の物語もあります」

伝説によれば、この庭園でいちばん高い木は、1400年にルッカの支配者になったパオロ・グイニージ(Paolo Guinigi)が植えたという。1430年、民衆の暴動によってその治世が終わり、彼は囚われの身になった。1432年に彼が獄中で死去する前には、塔の屋上にある木々が、葉を残らず落としたと伝えられている。


塔の屋上からは、ルッカに残るもうひとつの中世の塔、高さ約49mの「トッレ・デル・オーレ」が見える

The view from the top of the Guinigi Tower in Lucca, Italy, looks out on houses and squares below.
ルッカにあるグイニージの塔の屋上からの眺め。
Robert Harding Video/Shutterstock

ルッカ観光局によれば、トッレ・デル・オーレ(Torre delle Ore、オーレの塔)は、ルッカで最も高い塔だという。この塔は時計塔で、1390年から時を刻んできた。

グイニージの塔の屋上からは、街の家々の赤い屋根のほか、街が最初に築かれたローマ時代から残る円形闘技場の遺構を使った広場、いくつもの教会の尖塔、トスカーナ州の丘陵も見わたせる。

富を誇示するために建てられてから数世紀が経ったが、グイニージ家の塔はもちこたえている

Visitors are seen among the trees at Torre Guinigi in Italy.
グイニージの塔の屋上に生える木々の合間に観光客が見える。
Lenush/Shutterstock

ルッカでも人気の高い観光名所であるグイニージの塔は、イタリアの富裕層たちが、かつてどのように権勢をふるっていたのかについて、興味深い知識を与えてくれる場所だ。

提供元 Business Insider