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ビジネス

ヨットで世界一周航海中に、私は会社を設立した。昨年は約30億円の収益を上げている

Kelly Burch
21/10/2025 08:30:00
ルーク・バーウィコウスキー氏は、ニュージーランド周辺を航海中に会社を設立した。
ルーク・バーウィコウスキー氏は、ニュージーランド周辺を航海中に会社を設立した。
Courtesy of Luke Barwikowski

本稿は、ピクセル(Pixels)社の創業者兼CEOのルーク・バーウィコウスキー氏との対談を編集したエッセイである。


私は典型的なミシガン州の家庭で育った。父は鉄鋼会社で働き、母は教会でボランティア活動をしていた。子ども時代にとても感謝しているし、両親は素晴らしい人だが、こういう人生は自分には合わないと思っていた。

12歳でプログラミングを始めたが誰にも言わなかった。困惑することがわかっていたからだ。当時、プログラミングは格好いいものではなく、オタクのものだと思われていた。それに、町の誰もハイテク業界のことを何も知らなかった。

大学ではコンピューターサイエンスを勉強し、ソフトウェアエンジニアとして働きたいと思っていた。だが、それと同時に、YouTubeでロッククライミングの見事な風景を目にしてからというもの、アウトドアにも熱中した。

ハイテク業界でキャリアを築くべきか、それともアウトドアでやっていくのかとても悩んだ。

キャリアを捨てて旅に出た私を、家族は理解できなかった

大学在籍中に、ある企業から完全在宅勤務で年俸13万ドル(約1950万円、1ドル=150円換算:以下同)という内定を受けた。当時わずか19歳だったが、この金額は両親の稼ぎよりも多かった。だが、私はこの申し出を断った。自分が成長するまでミシガン大学で過ごす時間が必要だったので、この決断には満足している。

卒業後、家族が立派な職業と認める仕事に就いた。だが、長続きはしなかった。1年も働けば旅行できる資金が貯められるだろうと考え、自分で会社を興すことにした。

2024年度の会社の収入は2000万ドル。
2024年度の会社の収入は2000万ドル。
Luke Barwikowski

その年に3万ドル(約450万円)ほど貯めた。大金ではないがニュージーランドに出発するには十分な金額だ。家族は私がおかしくなったと思っていた。そんな遠くまで旅行する人はいないし、リスクを取ることも歓迎されなかった。私のことを心配したが、なぜ立派な職を投げうったのか理解できなかった。

旅仲間たちは私がせっせと働く理由を理解できなかった

新型コロナウイルス感染症が世の中を襲った時、私はニュージーランドにいた。2カ月間、インターネットがつながらないヨットの船室で、一人で過ごした。ほとんど絶えず風に流された状態の中、後のピクセルズとなる製品を考案した。オフラインで作業し、30分航行してインターネットに接続し、プログラムを転送した。

世の中が正常化し始めたので、旅を続けた。船底汚水排水用ポンプが壊れたヨットで、ニュージーランドからフィジーへ航海した。ヨットのオーナーにはポンプを修理する余裕がなかったので、毎晩船体をはい回って水を吸水した。その後、明け方までピクセルズの開発にいそしんだ。

両親は仕事を辞めた理由がわからなかった。
両親は仕事を辞めた理由がわからなかった。
Luke Barwikowski

旅仲間は誰も、私が何時間もコンピューターの前に座っている理由を理解できなかった。一方、私は、町のアパートでもヨットやケニアのテントからでも企業を設立できることがわかった。私は冒険を選び、旅仲間からの批判も甘んじて受ける覚悟があった。

会社の問題を把握するために、再び引きこもった

それから数年のうちに、ピクセルズはアクセラレーター(起業家育成組織)や投資家から徐々に注目され始めた。これは私の創業者としての力量を実証するものであり、とても大事なことだった。それまで起業家精神などなかったのだ。

だが、ピクセルズには多くの欠陥があった。2021年、このままでは会社が倒産すると確信した私は、アイダホ州でジャガイモを栽培する仕事に就いた。ヨットで航海中にシリコンバレーのあるアクセラレーターから電話を受けて、アドバイスを受けることになった。そのアクセラレーターの支援期間が終わるころになっても、まだピクセルズの問題は解決していなかったので、1カ月間自分でキャンピングカーを借りて問題に対応し始めたのだ。

1カ月が終わるころ、ピクセルズは今の形になった。その後、ピクセルズはこれまでにない躍進を示し、急速に成長した。昨年の収入は2000万ドル(約30億円)だった。

会社を経営しながら航海とキャンプを続けた

会社を立ち上げた頃は自由がほとんどなく、燃え尽き症候群に陥った。

だが、ある投資家と話した後、CEOになり半ノマド(放浪)の生活スタイルを送ることも可能だとわかった。創業者であっても、1日の中には非効率な部分が数多くある。会社のことが不安で、あくせくと仕事に追われていたのだ。

現在、私はユタ州の砂漠のキャンピングカーで生活している。ここには私の気をそらすものは何もない。どこからでもインターネットで接続できるテクノロジーにより、仕事に没頭することができる。会社を経営しながら冒険もできるのだ。

シリコンバレーのアクセラレーターの支援を受けていた時、他の創業者たちがリタイアにはいくら必要か話していた。彼らは数百万ドル(数億円)と答えたが、私はヨットを買うための10万ドル(約1500万円)だけあればよかった。

最近そのくらいの金額で自分のヨットを買った。航海とキャンプは私をより良いCEOにしてくれる。このライフスタイルのおかげで精神状態を最高な状態に保ち、高品質の作品を生み出すことができるのだ。

提供元 Business Insider