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バフェット引退でバークシャー・ハサウェイはどう変わるのか…専門家は後継者に大きな期待を抱いている

Theron Mohamed
05/08/2025 01:30:00
バークシャー・ハサウェイの次期CEOであるグレッグ・エイベルは、60年間同社を率いてきたウォーレン・バフェットの後任となる予定だ。
グレッグ・エイベルは、60年間率いてきたウォーレン・バフェットの後任としてバークシャー・ハサウェイのCEOになる予定だ。
Kevin Dietsch/Getty Images

グレッグ・エイベル(Greg Abel)には、大きな責任が待ち受けており、株式市場もそれを認識している。

バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の保険以外の業務を統括するエイベルは、投資の神様、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)の後任としてCEOの座を引き継ぐ予定だ。

伝説の投資家であり慈善家でもあるウォーレン・バフェットは、経営不振の繊維工場にすぎなかったバークシャー・ハサウェイを、60年の歳月をかけて時価総額1兆ドル(約146兆円)のコングロマリットへと変貌させた。バフェットは、部下に仕事を任せる力、優秀な人材を見抜く眼力、投資判断の的確さ、そして数多くの企業を買収してきたディールメーカーとして能力などにおいて、非常に高く評価されている。

2025年5月上旬にバフェットが突然CEO退任を発表するまで、バークシャー・ハサウェイの株価は年初から19%上がっていた。しかしその発表後は、同じ期間にS&P500指数が11%上がったのに対して、同社の株価は12%下がった。なお、同社はBusiness Insiderからのコメント要請に対して回答しなかった。

株価が振るわない状況でも、Business Insiderが取材したバークシャー・ハサウェイに詳しい5人の専門家は、エイベルの将来に対して概ね前向きな見方を示している。

経営スタイルの変化

グレッグ・エーブルは、バークシャー・ハサウェイの保険以外の業務を統括している。
グレッグ・エイべルは、バークシャー・ハサウェイの保険以外の業務を統括している。
Berkshire Hathaway Energy

バフェットに関する数冊の著書があり、デラウェア大学(University of Delaware)のワインバーグ・センター(Weinberg Center)所長であるラリー・カニンガム(Larry Cunningham)は、今後はエイブルのもとでバークシャー・ハサウェイの経営スタイルが変化していくと予想している。

「グレッグ・エイベルは生粋の実務家であり、業績不振の子会社に対してバフェットのように遠くから見守る姿勢を取らず、より積極的に関わるだろう」とカニンガムは話す。

「バークシャーは『賢い自律性(intelligent autonomy)』で知られるようになるだろう」

チェック・キャピタル・マネジメント(Check Capital Management)の責任者であり、長年のバークシャー・ハサウェイの株主であるスティーブン・チェック(Steven Check)も同様の変化を予測している。彼は、「実際バークシャーは、エイベルによってさらに優れた経営が期待できる」と話している。なぜなら、エイベルはバフェットよりも「より現場に密着した人材マネージャー」であり、バフェットは「何よりも資金の配分に関心を持っていた」ためだという。

チェックは、故チャーリー・マンガー(Charlie Munger)が2014年に株主向けに出した書簡にも言及している。バフェットのビジネスパートナーだったマンガーは、バークシャー・ハサウェイの保険事業部門の責任者のアジット・ジャイン(Ajit Jain)とエイベルの手腕を「世界トップクラス」と過去に称えており、「重要な点においては、両者ともバフェットよりも優れた経営者だ」と語っていたという。

ウォーレン・バフェットが退任を発表して以来、バークシャーの株価は下落している。
ウォーレン・バフェットが退任を発表して以来、バークシャーの株価は下落している。
Nati Harnik/AP

スミード・キャピタル・マネジメント(Smead Capital Management)の創設者であり、30年以上バークシャー・ハサウェイの投資家であるビル・スミード(Bill Smead)は、エイベルを優れた企業買収の専門家として支持している。スミードは、バークシャーの強みは「企業全体の買収にある。なぜなら、それこそがグレッグ・エイベルの得意分野だからだ」と話している。

バークシャー・ハサウェイはバフェットの在任期間中に、多くの企業を買収してきた。その中には、1967年にはナショナル・インデムニティ(National Indemnity)、1972年にはシーズ・キャンディーズ(See's Candies)、1983年にはネブラスカ・ファニチャー・マート(Nebraska Furniture Mart)、1996年にはガイコ(Geico)、2010年にはBNSF鉄道(BNSF Railway)、2016年にはプレシジョンキャストパーツ(Precision Castparts)、2022年のアレゲニー(Alleghany)、そして2017年、2023年、2024年のパイロット・トラベル・センターズ(Pilot Travel Centers)の一連の取引が含まれている。

バークシャー・ハサウェイは2024年、売上高で3710億ドル(約54兆3000億円)、営業利益で470億ドル(約6兆8800億円)を計上した。同社の規模が非常に大きくなってしまったために、業績を大きく押し上げるような買収先はほとんど残っていない状態だ。

バフェットがこれまでに行った最大の買収は、約10年前の320億ドル超のプレシジョンキャストパーツ(Precision Castparts)だった。バフェットは2025年の株主総会で、適切な買収対象があれば喜んで1000億ドル(約14兆6400億円)を支払う用意があると話している。

エイベルは、バークシャー・ハサウェイの保険事業を担当するアジット・ジャイン(Ajit Jain)や、約3000億ドル(約4兆3920億円)にのぼる株式投資を管理する投資運用責任者のトッド・コームズ(Todd Combs)とテッド・ウェシュラー(Ted Weschler)から、経営や投資の面での支援を受けることになる。

スミードは、バークシャー・ハサウェイの「最大の失敗」は、コームズとウェシュラーの投資家としての実績をもっと公にアピールしなかったことだと言う。そうしていれば、バフェット退任後の株主の安心感が高まり、ここ最近の株価の下落もこれほどにはならなかった可能性があると付け加えている。

提供元 Business Insider