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技術

「Slackだけで仕事をする」に一歩前進。セールスフォースが語る大幅アップデートの意図

松本和大[Tech Insider記者・編集者]
20/10/2025 02:45:00
ブース展示
「Dreamforce 2025」におけるSlackのブース展示。
撮影:松本和大

セールスフォース(Salesforce)が10月13日(現地時間)に発表した、「Slack(スラック)」の大型アップデート。企業が保持するデータなどを統合して検索できる「エンタープライズ検索」などが実装され、チャットツールというより統合型プラットフォームとしての色を強めつつある。

セールスフォースがSlackに期待するのは、同じく10月13日に発表した「エージェンティック OS」の中核を担う役割だ。AI時代のプラットフォームとして発表されたエージェンティック OSとは、一体どのような存在なのか。

アメリカ・サンフランシスコで10月14~16日に開催された年次イベント「Dreamforce 2025」で、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの鈴木晶太氏を取材した。

エージェンティック OSは「家のようなもの」

エージェンティック OS
セールスフォースが発表した「エージェンティック OS」。
撮影:松本和大

セールスフォースが発表した「エージェンティック OS」は、データやアプリ、AIエージェントなどを統合した環境を構築することで、ユーザーが複数のツールやアプリを行き来せずに業務を完結できるシステムだ。

そしてSlackが、セールスフォースが掲げるコンセプト「エージェンティック エンタープライズ」の「顔(インターフェース)」として位置づけられる。SlackからセールスフォースのCRM(顧客管理)データやサードパーティー製のAIエージェントなどにアクセスでき、生産性の向上を実現する。

鈴木氏はエージェンティック OSを「家のようなもの」と表現した。

「Slackのベースはコミュニケーションですが、他社製のアプリケーションのデータを参照できるようになることで、いろいろなものを『家』に取り込んで、その(家の)中だけで仕事ができます」(鈴木氏)

Slackは主にビジネスチャットツールとして提供されている。

しかし、今回のエージェンティック OSの発表により、Slackはさまざまなデータにアクセスするための「検索窓」のような形に進化する。検索だけでなく、AIエージェントが人の代わりに仕事をしてくれる場にもなる。

Salesforce チャンネルの登場で「壁が溶け始めた」

Salesforce チャンネル
6月に発表された「Salesforce チャンネル」。
出典:Slack

Slackは元々Slack外のサービスとの連携も強みとしていたが、エージェンティック OSの発表を機に、「連携」から「統合」へと、より「プラットフォーム」としての立ち位置を強化している。

その象徴的な動きと言えるのが、6月に発表された「Salesforce チャンネル」だ。

Salesforce チャンネルは、セールスフォースのCRMデータをSlackに統合するために開発された新機能。Slackからセールスフォースのデータにアクセスしたり、逆にセールスフォースからSlackの会話に参加できたりする。

Salesforce チャンネルが発表されるまで、セールスフォースのCRMデータとSlackは基本的に「異なる世界」だった。営業チームが作業するのはセールスフォースなのに、会話はSlack上で進んでいき、情報やツールが分断されるような状況が生じていた。

「Salesforce チャンネル以前にも『Slack Sales Elevate』という有料アドオンがあり、セールスフォースとSlackの連携は一部可能になっていました。

ですがSalesforce チャンネルが登場し、料金改定によってセールスフォースの既存ユーザーがSalesforce チャンネルを無料で使えるようになったことで、(セールスフォースとSlack間の)壁が一気に溶け始めました」(鈴木氏)

Agentforce Channel Expert
新機能の「Agentforce Channel Expert」。
出典:Slack

エージェンティック OSは、Salesforce チャンネルが掲げていた「ツールやデータの統合」のコンセプトを一歩進め、ユーザーがさらに多くの機能をシームレスに使えるようにする。

エージェンティック OS導入の一環として発表されたAIエージェント「Agentforce Channel Expert」も象徴的存在だ。

Agentforce Channel ExpertはSlackのチャンネル内でユーザーが社内ワークフローやプロセスなどに関する質問をすると、その企業の情報に基づき、「Channel Expert」と呼ばれるAIエージェントが即座に回答を提示する。

提供元 Business Insider