セールスフォース(Salesforce)が10月13日(現地時間)に発表した、「Slack(スラック)」の大型アップデート。企業が保持するデータなどを統合して検索できる「エンタープライズ検索」などが実装され、チャットツールというより統合型プラットフォームとしての色を強めつつある。
セールスフォースがSlackに期待するのは、同じく10月13日に発表した「エージェンティック OS」の中核を担う役割だ。AI時代のプラットフォームとして発表されたエージェンティック OSとは、一体どのような存在なのか。
アメリカ・サンフランシスコで10月14~16日に開催された年次イベント「Dreamforce 2025」で、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの鈴木晶太氏を取材した。
エージェンティック OSは「家のようなもの」
セールスフォースが発表した「エージェンティック OS」は、データやアプリ、AIエージェントなどを統合した環境を構築することで、ユーザーが複数のツールやアプリを行き来せずに業務を完結できるシステムだ。
そしてSlackが、セールスフォースが掲げるコンセプト「エージェンティック エンタープライズ」の「顔(インターフェース)」として位置づけられる。SlackからセールスフォースのCRM(顧客管理)データやサードパーティー製のAIエージェントなどにアクセスでき、生産性の向上を実現する。
鈴木氏はエージェンティック OSを「家のようなもの」と表現した。
「Slackのベースはコミュニケーションですが、他社製のアプリケーションのデータを参照できるようになることで、いろいろなものを『家』に取り込んで、その(家の)中だけで仕事ができます」(鈴木氏)
Slackは主にビジネスチャットツールとして提供されている。
しかし、今回のエージェンティック OSの発表により、Slackはさまざまなデータにアクセスするための「検索窓」のような形に進化する。検索だけでなく、AIエージェントが人の代わりに仕事をしてくれる場にもなる。
Salesforce チャンネルの登場で「壁が溶け始めた」
Slackは元々Slack外のサービスとの連携も強みとしていたが、エージェンティック OSの発表を機に、「連携」から「統合」へと、より「プラットフォーム」としての立ち位置を強化している。
その象徴的な動きと言えるのが、6月に発表された「Salesforce チャンネル」だ。
Salesforce チャンネルは、セールスフォースのCRMデータをSlackに統合するために開発された新機能。Slackからセールスフォースのデータにアクセスしたり、逆にセールスフォースからSlackの会話に参加できたりする。
Salesforce チャンネルが発表されるまで、セールスフォースのCRMデータとSlackは基本的に「異なる世界」だった。営業チームが作業するのはセールスフォースなのに、会話はSlack上で進んでいき、情報やツールが分断されるような状況が生じていた。
「Salesforce チャンネル以前にも『Slack Sales Elevate』という有料アドオンがあり、セールスフォースとSlackの連携は一部可能になっていました。
ですがSalesforce チャンネルが登場し、料金改定によってセールスフォースの既存ユーザーがSalesforce チャンネルを無料で使えるようになったことで、(セールスフォースとSlack間の)壁が一気に溶け始めました」(鈴木氏)
エージェンティック OSは、Salesforce チャンネルが掲げていた「ツールやデータの統合」のコンセプトを一歩進め、ユーザーがさらに多くの機能をシームレスに使えるようにする。
エージェンティック OS導入の一環として発表されたAIエージェント「Agentforce Channel Expert」も象徴的存在だ。
Agentforce Channel ExpertはSlackのチャンネル内でユーザーが社内ワークフローやプロセスなどに関する質問をすると、その企業の情報に基づき、「Channel Expert」と呼ばれるAIエージェントが即座に回答を提示する。