宇宙に存在するすべての元素は、遠い昔に星の深部で生まれました。私たちが日常で目にする金や酸素、水素、炭素といった元素も、もとをたどれば星の核融合反応の産物です。普段は気に留めないことかもしれませんが、星の一生は元素の誕生と宇宙への広がりと密接な関係があります。
星の誕生は、宇宙空間に漂うガスや塵が重力によって集まり、高温高圧の中心核が形成されることから始まります。この中心核で起こるのが核融合反応です。最初に行われるのは、水素原子核が融合してヘリウムを作り出す反応です。この過程で大量のエネルギーが放出され、星は輝き続けます。
水素からヘリウムへの核融合が進むと、やがて星の中心部にはヘリウムが溜まっていきます。高い重力で圧縮されたヘリウムは、さらに高温となり、今度はヘリウム同士が融合して炭素や酸素など、より重い元素を生み出します。こうして星の内部ではさまざまな化学元素が次々に作られていくのです。
太陽のような中程度の質量を持つ星では、核融合が炭素や酸素の生成まで続きます。しかしもっと巨大な星では、超高温環境が発生し、より重いネオン、マグネシウム、シリコン、鉄といった元素も作られます。鉄に到達すると核融合はそれ以上進むことができなくなります。
星が寿命を迎えるとき、この宇宙元素の「製造工場」は劇的な形で終焉を迎えます。太陽質量より軽い星は外層を穏やかに放出し、惑星状星雲となります。そのガスの中に炭素や酸素などの元素が含まれており、やがて宇宙空間へと広がっていきます。
一方、重い星の場合は、最期に超新星爆発という大規模な爆発を起こします。この爆発は、単に星の最期を告げるだけでなく、その瞬間、これまで星の中心で生成されたあらゆる重元素を一気に宇宙空間にばらまく役目も果たします。さらに超新星爆発時には、爆発の極限的なエネルギーによって新たな重元素、たとえば金やウランなどが生み出されることもあります。
このようにして放出された元素は、宇宙空間を漂い、やがて他のガスや塵と混ざり合い、次世代の星や惑星、さらには生命の材料となる分子へと生まれ変わります。私たちが呼吸する空気の酸素も、体を構成する炭素も、すべては遠い昔、星の核融合と超新星爆発から生まれました。
宇宙全体を見回せば、至るところで恒星が誕生し、煌めき、やがて爆発して元素を広げていきます。この果てしないサイクルによって、宇宙はますます多様な元素に富んでいきます。現在知られている化学元素のほとんどが、こうして繰り返される星の進化と終焉のなかで生まれたものです。
また、最新の研究によると、中性子星同士の合体、いわゆるキロノバと呼ばれる現象でも、多くの重元素が作られていることが分かってきました。キロノバは超新星に匹敵するほどの爆発現象で、金やプラチナといった貴重な元素が大量に放出されると考えられています。
こうした元素の広がりは、天体望遠鏡やスペクトル観測によっても確かめられています。遠くの星雲や銀河の光を分析することで、そこに含まれる元素の種類や量が分かり、宇宙の歴史や星の一生をたどるヒントになっています。
興味深いことに、太陽系の初期には、他の星で作られてばらまかれた元素がすでに存在していました。これらが集まり、やがて地球という惑星や、生命の基盤となる物質へと変化したのです。
この壮大な元素の循環は、宇宙の多様性や進化の源となっています。星の死と誕生は、単なる天体の現象ではなく、私たちの存在そのものと深くつながっているのです。もし次に夜空を見上げる機会があれば、輝く星々の中に自分自身のルーツがあることを思い出してみるのも面白いかもしれません。
宇宙の元素の旅路は今も続いています。新たな星が生まれ、新たな元素が作られ、再び宇宙へと広がっていく――その中に私たちも含まれている、と考えると壮大なロマンを感じずにはいられません。