フェラーリという名前を聞くだけで、多くの人が心をときめかせるのではないでしょうか。その理由は、フェラーリが常に情熱と革新性、高度な技術力で自動車界をリードしてきたからです。そんなフェラーリから2021年に登場した296GTBは、ブランドの歴史に新たな1ページを刻む存在となりました。その大きな理由は、新開発のV6ハイブリッドパワートレインにあります。
これまでフェラーリといえばV8やV12エンジンが主流でしたが、296GTBでは1960年代以来となるV6エンジンが採用されました。しかし、ただの6気筒ではありません。2.9リッターのV6ツインターボエンジンに、電気モーターを組み合わせたハイブリッド仕様です。これにより、システム合計で830馬力という驚異的なパワーを実現しました。
V6エンジン単体でも663馬力を発生し、電気モーターの出力は167馬力です。この電動システムのおかげで、アクセルを踏んだ瞬間からビビッドなレスポンスを感じることができ、ゼロから100km/h加速はわずか2.9秒。フェラーリならではの官能的な加速体験が味わえます。
ハイブリッドと聞くと環境性能が連想されがちですが、296GTBが目指したのは、あくまで「新時代のドライビングファン」。確かにCO2排出量は低減し、電動のみで約25km走れるEVモードも備えていますが、メインはフェラーリのスポーツカーらしい走りをいかに磨くかでした。
296GTBの特徴的な走行体験の一つは「感度の高さ」です。ミッドシップに搭載されたV6エンジンは車体の重心を低くし、重量配分も理想に近づけています。そこに軽量化されたボディやシャープなステアリング、アクティブエアロパーツが組み合わさることで、ドライバーの操作に瞬時に反応するハンドリングを実現しています。
フェラーリが提唱する「fun-to-drive」は、単に速いだけのマシンではありません。コーナリング時のグリップ力、一体感のある車体挙動、そして走る楽しさを五感で味わえることが重視されています。ハイブリッドモデルでありながら、自然吸気V12にも負けない官能的なエンジンサウンドが楽しめるのも見逃せないポイントです。
エンジンサウンドの開発には相当なこだわりが込められました。ターボエンジンでありながらも、高回転域では心地よい咆哮を轟かせ、まるで過去の名作フェラーリを思い出させる味わい深い音質を実現。走行モードを切り替えることで、静かなハイブリッドならではの走りとフェラーリらしい刺激的な走行サウンド、その両方を堪能できます。
296GTBは電子制御技術も最先端です。eSSC(Electric Side Slip Control)と呼ばれるシステムが、モーターのトルクやブレーキを緻密にコントロールし、限界ギリギリのコーナリングも素人ドライバーが安全に楽しめるようサポートしてくれます。これにより、従来のハイパフォーマンスカーよりも格段に扱いやすくなったのです。
内装にもフェラーリらしいこだわりが光ります。最新のデジタルインターフェースを搭載しつつ、伝統的なイタリアンレザーとクラフトマンシップを感じさせる仕上げ。ドライバーを中心に考えられたコックピットレイアウトが、運転する楽しさを高めてくれます。
生活の中でちょっとした街乗りもこなせる上、電動モードによる静かな移動も可能になったのは、新世代フェラーリならではの魅力です。従来のスポーツカーらしい「ワイルドさ」と、最新テクノロジーが織りなす「洗練」を両立したのが296GTBと言えるでしょう。
女性ドライバーにも注目されています。これまでスポーツカー=男性的なイメージが強かったですが、296GTBはコンパクトなボディと容易な取り回しで、性別を問わず運転しやすいのが特徴です。インテリアオプションも豊富なため、自分好みの一台にアレンジする楽しみもあります。
フェラーリによると、この296という数字は「2.9リッターの6気筒」を意味し、GTBは「グランツーリスモ・ベルリネッタ」の略称です。こうしたネーミングからも、伝統を大切にしつつ新しいトレンドを日々生み出す姿勢が伺えます。
世界的に電動化が進む中で、フェラーリがいかに「ドライビングプレジャー」を追求できるか。その答えの一つがこの296GTBです。未来に向けて進化し続けるフェラーリの新たな一歩を、実際に体験してみたくなりませんか。
時代の流れに応じて、スポーツカーも一層多彩な個性が求められています。その中で296GTBは「フェラーリらしさ」と「次世代テクノロジー」を見事に両立させた1台です。今後もこのモデルを皮切りに、より情熱的で洗練されたハイブリッドフェラーリが登場することが期待されます。