親として、子どもが自分から片付けができるようになってほしいと願う方は多いでしょう。しかし「片付けなさい」と何度も繰り返すだけでは、なかなか習慣にはなりません。実は、日々のちょっとした工夫や環境づくりが、片付け上手な子どもを育てる秘訣となるのです。
まず注目したいのは、片付けが「楽しい」と感じられる体験を重ねることです。子どもは「やらされる」ことよりも「自分からやってみたい」と思えることに取り組みやすいもの。片付けタイムをゲームや競争にしたり、お気に入りの音楽を流して気分を上げたりする工夫がおすすめです。
小学生や幼児期から始めたいのが、所定の定位置を決めることです。「おもちゃはこの箱」「絵本はこの棚」など、モノに帰る場所を設けてあげましょう。場所が定まっていれば、「どこに戻せばいいの?」という迷いがなくなり、自然と片付けの習慣が身に付きます。
収納は子どもの背丈や手の届きやすさを意識することもポイント。大人には使いやすくても、子どもにとっては開けづらい引き出しや高い棚では、片付ける意欲が下がってしまいます。低めの棚やフタが開けやすい収納ケースを用意すると良いでしょう。
片付けを学ぶうえで、「一緒にやる」ことは何よりも大切です。最初は親が手を取りながら「おもちゃをおうちに戻してあげよう」などと声をかけ、一緒に片付けてみます。こうした共同作業の中で、「片付けるって気持ちがいい!」と子ども自身が実感できる瞬間を増やしましょう。
片付けを成功体験として褒めることも忘れてはいけません。「きちんと元の場所に戻せたね」「お部屋がきれいになったね」など、小さな一歩を肯定的な言葉でしっかり伝えましょう。子どもは褒められることで自信がつき、やる気もアップします。
生活リズムの中に“お片付けタイム”を組み込むのも有効です。例えば、保育園や幼稚園では「おやつの前にお片付け」「帰る前にみんなで片付け」などのルールがあります。家庭でも、朝出かける前や寝る前など、毎日の決まったタイミングで片付けを習慣化すると、無理なく身につきやすくなります。
たまには片付けを家族全員で取り組むイベントにしても楽しいものです。「今日はお部屋の大掃除デー」などと特別感を持たせることで、非日常の楽しさも加わります。一緒に掃除をした後は、おやつタイムにするなど、片付け後のご褒美も効果的です。
子どもが片付けに飽きてしまったり、うまくできない日ももちろんあるでしょう。そんなときは叱るよりも、「どうしたら楽しくできるかな?」と子どもの目線で解決策を考えるのがおすすめです。子ども自身が工夫やアイデアを出せる機会を作るのも大切です。
片付けたくない気持ちが強いときには、「片付けの必要性」を対話で伝えてみるのもよいでしょう。例えば、「お部屋がきれいだと、次に遊ぶときにすぐ見つけられて楽しいね」と実生活へのメリットをわかりやすく話してみましょう。
片付けの習慣は、子どもの自立心や自己管理能力を育てるうえでとても大切な力となります。また、親と子の信頼関係やコミュニケーションのきっかけにもなります。急がず焦らず、子どもの成長に寄り添いながらサポートしていきましょう。
面白い事実として、片付け上手な子どもは「選ぶ力」にも優れていると言われています。片付けの過程で「必要なもの・不要なもの」を自分で判断できることで、将来的な決断力や整理整頓力も養われます。
もう一つ大切なのは「ためこまない習慣」。1年間使っていないモノ、一度も遊んでいないおもちゃなど、定期的に見直す機会をつくりましょう。「誰かにあげよう」「リサイクルしよう」など思いやりや社会性を学ぶ機会にもなります。
お片付けを通じて、物の大切さや感謝の気持ちに気づく子どもも少なくありません。「ものを大事に使おうね」「ありがとう、と声をかけてからおもちゃ箱に戻そう」など、心を育てるアプローチもおすすめです。
整理する習慣がつくと、勉強机やランドセルの管理も自分でできるようになり、小学校入学後の自主性向上にもつながります。これは、家庭で身につけた片付け習慣が教育の基礎にもなるという嬉しい効果です。
最新の研究では、片付け習慣のある子は自己肯定感や学業成績にも好影響が見られるというデータもあります。自宅が心地よい空間であればあるほど、子どもの心も安定しやすいようです。
家庭のルールは時々見直して、子どもの成長や関心ごとに合わせて更新することも忘れずに。季節ごとにおもちゃや服を見直すことで、暮らしの変化を楽しむ柔軟な心も育てられます。
片付け上手な子どもに育てるためには、日々の習慣づくりが何よりの近道。小さなきっかけでも構いません。今日から、お子さんと一緒に楽しみながら、片付けの習慣作りを始めてみてはいかがでしょうか。