アニャ・テイラー=ジョイという名前は、近年の映画・ドラマファンなら一度は耳にしたことがあるでしょう。彼女はその独特な美貌と圧倒的な演技力により、インディーズ映画の小さな世界からハリウッドのトップスターへの階段を駆け上がりました。その軌跡は、今や多くの若手俳優にとっての成功モデルともなっています。
アニャ・テイラー=ジョイは1996年にアメリカで生まれ、父がアルゼンチン系イギリス人、母がスペイン系イギリス人という国際色豊かな家系に育ちました。そのため英語とスペイン語のバイリンガルとして幼少期を過ごし、グローバルな感覚や感性を早くから身につけていました。
10代の頃にはモデルとしてのキャリアをスタートしますが、本格的な俳優デビューは2015年、ロバート・エガース監督によるホラー映画『ウィッチ』からでした。この作品で彼女は主演のトマシン役を務め、物語の中心に立つ存在感を発揮。インディーズ映画ながらサンダンス映画祭で高い評価を得て、アニャは瞬く間に注目の的となります。
『ウィッチ』の成功は、アニャにとってターニングポイントとなりました。不安定な時代背景や複雑な感情を内包したキャラクターを繊細に演じ、多くの批評家から絶賛されます。そしてこの役で若手女優としての地位を確立し、多くの新進気鋭監督から声がかかりました。
続いて、彼女はM・ナイト・シャマラン監督の映画『スプリット』(2016年)に出演します。不気味な連続誘拐犯とその人質という緊張感のあるシーンの連続の中で、被害者の少女を演じた彼女の表現力が話題となりました。興行的にもヒットし、ハリウッド進出の足掛かりとなります。
その後、アニャは『ニューミュータンツ』や『エンマ』など、ジャンルや役柄を問わず幅広い作品に挑戦。コスチューム・プレイからスリラーまで柔軟に適応し、演技の幅をさらに広げていきます。特に『エンマ』では英国文学のヒロインを生き生きと表現し、英国アカデミー賞にもノミネートされました。
2020年、アニャ・テイラー=ジョイの名が世界中に知れ渡るきっかけとなったのは、Netflix配信ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』です。孤独な天才チェスプレイヤー、ベス・ハーモンを演じ、その繊細な感情表現と集中力が高く評価されました。ドラマは国際的な大ヒットとなり、アニャはゴールデングローブ賞主演女優賞を含む数々の賞を受賞します。
この作品によって、彼女のファッション・センスや独特のカリスマ性も注目されるようになり、雑誌の表紙や高級ブランドの顔としても活躍し始めました。アニャの透明感のある美しさと、芯の強さを感じさせる眼差しは多くのファンを魅了しています。
彼女の演技の魅力は、ただ美麗なビジュアルだけでなく、どんな難しい役柄にもリアルな感情を丁寧に落とし込む力にあります。役に完全になりきるため、毎回膨大なリサーチや役作りに時間をかけるのだとか。本人は「役を通して新しい生き方を学ぶことが好き」と語っています。
さまざまな国や文化をルーツに持つアニャ・テイラー=ジョイは、多様性の時代を象徴するスターともいえるでしょう。異なる価値観やアイデンティティ、言語を自然体で受け入れる姿が、若い世代の共感を呼んでいます。
また、彼女はプライベートでもヴィーガンなどサステナブルなライフスタイルを実践し、社会問題への積極的な発言が目立ちます。映画祭のインタビューやSNSでの発信も飾らず率直で、ファンとの距離感も近いようです。
今後は『マッドマックス』シリーズの新作『フュリオサ』など、さらに話題作への出演が控えています。アクションやサイエンスフィクションといった新ジャンルでの快進撃にも期待が集まっています。
アニャ・テイラー=ジョイの成長の背景には、親しみやすさとどこかミステリアスな雰囲気が同時に存在している点が挙げられるでしょう。そのキャラクター性が、多数の映画監督やクリエイターに支持され続ける理由です。
ハリウッドでは今や引っ張りだこの存在となったアニャですが、決して初心を忘れず、役ごとに真摯に向き合う姿勢は変わりません。そのたびに新しい顔を見せてくれる彼女を、今後も目が離せません。
インディーズ映画から飛び立ち、グローバルな映画界でセンセーションを巻き起こしたアニャ・テイラー=ジョイ。彼女のこれからの挑戦と活躍が、多くの人に夢と希望を与えています。