自民党内で憲法改正を巡り、衆院議員と参院議員の温度差が改めて鮮明になっている。衆院側が大規模災害などに備えた緊急事態条項の条文化を急ぐのに対し、参院側は選挙区の合区解消を最優先課題に据える。高市早苗首相(党総裁)は国会の改憲発議に1年でめどを付ける方針を掲げたが、足並みの乱れが実現へのハードルとなりそうだ。
「憲法改正の発議についてめどが立ったと言える状態で、来年の党大会を迎えたい」。首相は4月12日の党大会で、改憲への意欲を前面に押し出した。複数の党幹部によると、事前の調整はなく「いつものトップダウン」による表明だった。これを受け、自民は改憲への動きを加速させている。
衆院(定数465)では、自民会派が316議席を占め、発議に必要な3分の2以上を単独で確保。国会運営の主導権を握っており、緊急事態条項の具体的なイメージ案の作成を衆院事務局に指示した。憲法審査会は今月12日の幹事懇談会で提示を受け、14日に討議に入る。日本維新の会との連立合意に基づき、年度内の条文案の国会提出を目指す。
同条項は選挙の実施が困難となった場合の議員任期延長が柱。与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)は「条文案を詰める段階に入っている」と訴え、国民民主党も協力する方針。慎重な立場を崩さない中道改革連合などを「数の力」で押し切るかが焦点だ。
一方、参院(定数248)は事情が大きく異なる。与党会派は「3分の2」に46議席足りず、野党の協力が必要。憲法審査会長は立憲民主党の長浜博行氏が務め、討議を進めるにも野党との協調が条件となる。参院自民の中堅議員は「(毎週水曜の)定例日に審査会を開くことも当たり前ではない」と指摘。自民は次回の審査会を20日に開きたい考えだが、日程は決まっていない。
参院自民が合区解消に照準を絞るのも、野党の賛同が得やすいとみているためだ。合区の扱いは与野党共通の関心事で、自民の松山政司参院議員会長は「突破口になる」と述べている。
首相と参院自民執行部が連携できるかも課題だ。2026年度予算の審議日程を巡り、双方の関係はぎくしゃくした。松山氏は4月28日に首相官邸で首相と会い、改憲を含めた後半国会の対応を報告するなど意思疎通を図った。首相と参院自民は5月下旬以降、夜の懇談会を順次開く見通しだ。