ユルゲン・クロップ氏は、レッドブル・グループでの役割に取り組むにあたって、各国の文化の違いを経験している。ドイツ誌『キッカー』のインタビューで、日本やブラジルの印象を語った。
ボルシア・ドルトムントやリヴァプールなどを率いたクロップ氏は、今年1月1日付でレッドブルのヘッド・オブ・グローバル・サッカーに就任。レッドブル・ザルツブルクやRBライプツィヒをはじめ、アメリカのニューヨーク・レッドブルズ、ブラジルのレッドブル・ブラガンチーノ、そして日本のRB大宮アルディージャも傘下に収める同グループで、25年近い監督経験を生かし、指導者を支援するなど戦略的な役割を担っている。さらに、各クラブの関係者とも日常的に交流を重ねていることが報じられている。
そんなクロップ氏は、自身の役割への取り組み方について「私はこれまでも、どこかに行って初日から『今までのやり方は良くなかったので全部変えよう』とか言うタイプではなかった」と強調。「まず現場で何が起きているのか、そしてなぜそうなっているのかを理解しようと努めてきた。変えなければならない理由が明確にあるときだけ、それを実行してきた」と説明し、こう続けた。
「これまで各クラブで小規模にやってきたことを、今はより大きな規模でやっているだけだ。複数のクラブと関わっているということだが、もちろん毎日直接関与するわけではない。日本やブラジル、アメリカ、ライプツィヒのすべてを毎日チェックすることはできないし、そのつもりもない。私は人々を支え、各クラブをできるだけ前進できるため手助けをしたい。それ自体がものすごく楽しい仕事なんだ」
「現地の人々と出会えるのも本当に素晴らしいことだ。もちろん、異国の地で建造物や名所を見るのも印象的だが、本当の意味で人とつながるには、共通の話題が必要だ。それにおいてはサッカーほど適したものはあるだろうか?ドイツで私のレッドブルでの仕事についてどう思うか、いろいろ言う人もいる。その人たちには、『申し訳ないけど、本当に楽しくて仕方がない』と言いたいね」
■国による文化の違い
インタビューでは、それぞれの国の文化で最も印象深かったことを問われたクロップ氏。「たとえばすぐに気づくのは、人と人との直接的な関わり方が、日本では当然ながらブラジルとはまったく違うということだ。本当に大きな違いがある」と述べ、それぞれの特徴を挙げた。
「ブラジルではすぐに親しくなるが、日本ではむしろ“近づきすぎないように”気をつけなければならない。だからといって、それが人間性を示すわけではないよ。それは一つの伝統であり、文化なんだ。自分の率直な性格を考えると、私にとって、ブラジルでは人の気分を害さずに済むのが少し楽だろう。もちろん、それは最も避けたいことだからね。私はどちらの文化も大好きだし、まったく異なっていても、どちらでもサッカーは非常に大きな存在なんだ」
現在の仕事を心から楽しんでいるクロップ氏。モチベーションについて問われた際、「どのクラブも今より良くなり、今より成功できる価値があると思っている」と語り、「ただ、完全に最大の成功を手にできるクラブはごくわずかだ。だが、自分たちの最大値を目指す過程で、みんなが可能な限り最高の時間を過ごすべきだと私は思う。サッカーも人生も、私はいつもそう理解してきた。そうでなければ、すべてが意味を失ってしまう」とも指摘した。
「だからこそ、世界的な大都市の東京のすぐそば、さいたまのような場所で、本物のファンコミュニティを築こうとしているクラブを支援することに、大きなやりがいを感じている。ある意味では“原点回帰”のような部分もあるんだ。もちろん、物事には時間がかかる。短期的な結果で評価されることはわかっているが、私が関心を持っているのは中長期的な発展だ。それが実現すれば、本当に素晴らしいと思う」
■サッカーの立ち位置とは?
さらにクロップ氏はインタビューの中で、現代におけるサッカーの立ち位置にも言及した。「一般的に一言で言えることではない。いま私は本当に異なる大陸を見渡しているからこそ、そう感じる」と前置きし、こう語った。
「はっきり言わなければならないのは、サッカーがどこでも同じ状態ではないということだ。もちろんヨーロッパのサッカー、特にプレミアリーグではお金が支配しており、だからこそ最高の選手たちがそこへ移籍していく」
「だが、たとえば日本はまったく別の状況にある。抱えている課題もまるで違う。日本では、まずしっかりと職業教育を終えることが重視され、プロとしてのキャリアが始まるのも23歳になってからということもしばしばある」
「アメリカでは、サッカーをいまだに“紹介している”段階で、より魅力的でスペクタクルなスポーツにする方法が模索されている。現地で人気の高いスポーツと競うためにね。そして、非常に感情的な国ブラジルでは、長年海外に流出していた選手たちが、今はかなりの報酬を得て国内に戻るようになっている。数年前なら考えられなかったことだ」
「あなたの質問に戻ると、サッカーは国や地域によってまったく異なる発展を遂げており、それでいいと思う。大切なのは、それぞれの場所で持続的かつ正しい形で進めていくことなんだ」